会社設立
会社設立について
これから事業を立ち上げたいと思うときに最初に悩むのが個人で始めるのか会社組織にするのか悩むと思います。どちらが良いかは一概には言えませんが、以下に会社組織にするメリット・デメリットを個人事業との比較で記します。
会社組織のメリット
(1)対外的信用
- 個人事業・・・小規模なイメージがつきまとうことは否定できない。
- 会 社・・・登記簿による資本金・事業内容等の公示・人の集まり(人が協力してなす事業)としての位置付け等から社会的信用が得られやすい。
また、金融機関からの融資、従業員の募集等多くの点において個人事業に比べ信用が得られやすい。
(2)有限責任
- 個人事業・・・取引上の負債は、すべて個人の責任において弁済しなければならず、その額によっては、個人財産を処分して弁済しなければならない場合がある。
- 会 社・・・取引上の負債は、会社自身の責任である。株式会社の株主・※持分会社の有限責任社員は、剰余金等の配当が減するか、もしくは出資金を失うだけであり、会社の債務につき責任を負わない。
(3)事業資金の調達と人材集め
- 個人事業・・・事業資金はそのほとんどが「借金」であり、しかも個人の借金であるため、その人個人の担保能力の範囲でしか借入れできないことがほとんどである。
- 会 社・・・その事業の賛同者を募って出資してもらうことが可能である。
借入れも担保能力以外の反面、たとえば代表者の信用・会社の営業力等さまざまな角度からの評価が期待できる。
また、社会保険の整備等会社としての職場環境は、個人に比べ優秀な人材を集めやすいといえる。
(4)事業年度・決算期
- 個人事業・・・1月1日から12月31日までは事業年度であり、12月31日が決算日と限定されている。
- 会 社・・・業種等に見合った時期又は会社に都合の良い時期を事業年度として、自由に決算日を選択することができる。
(5)事業の存続
- 個人事業・・・事業主の死亡により終了する。事業を承継する者がいる場合であっても、それはあくまでも新たな事業の開業となる。
また、家族が事業を承継する場合には、相続の関係で事業にかかる財産の散逸や相続税の問題が生ずるおそれがある。 - 会 社・・・経営者が死亡した場合であっても、定款でその者の死亡が解散事由とされていない限り、経営者や株主は変更するが、会社は存続することができる。
信用、取引先との関係等の財産もそのまま承継することとなる。
(6)税法上の取扱い
- 個人事業・・・所得税として超過累進課税率により課税される。
- 会 社・・・法人税が課税。資本金と所得額により変わるが、一定税率で課税される。
会社組織のデメリット
(1)費用
- 個人事業・・・税務署に届出をするだけでいつでも始めることができる。
- 会 社・・・設立登記が完了しないと始めることができない。
司法書士に登記を依頼した場合、株式会社の場合で約30万円、合同会社の場合で約15万円かかります。
また、公証役場や法務局の手続きがあるので時間がかかる。
(2)経理処理
- 個人事業・・・年間の売上と費用を集計して、自分で確定申告が可能。住民税や事業税の申告の必要はない。
- 会 社・・・複式簿記で会計処理をして決算書を作成すること。
決算書類は「損益計算書」と「貸借対照表」を作成することを義務付けられているので、記帳業務が煩雑。
申告もかなり複雑で、税法を理解していない人が申告書類を作るのは難しい。
住民税や事業税の申告書も別途作成しなければならない。
また、事業や従業員の数によっては、会社にすることによって健康保険や厚生年金保険の適用事業となり、社会保険料の負担が発生する。
(3)損金処理
- 個人事業・・・事業に必要なものであれば制限なし。
- 会 社・・・資本金額に応じて損金不算入の制度があり、支出する交際費の一部又は全額が損金にならない。
(4)住民税
- 個人事業・・・所得が赤字になれば税負担なし
- 会 社・・・法人所得が赤字でも、資本金額に応じて最低でも7万円の法人住民税・均等割の税負担が発生する。
会社法とは
商法の「会社」に関連する部分と、有限会社・商法特例法が、一つの法律として再編されたものです。従来は、株式を公開している大企業を対象とする法律の定め方をしていましたが、会社法では逆に、中小企業を対象に法律の原則が定められています(国内の会社の99%は中小企業です)。
改正点
- 最低資本金制度の廃止
従来は、株式会社設立時には資本金が最低1000万円必要でしたがその制限が廃止されました。 - 有限会社制度の廃止
会社法施行日以降は、有限会社の設立はできません。既存の有限会社については、いつでも株式会社若しくは持分会社*1へ移行することが可能です。 - 役員の任期伸長規定の導入
全ての株式に譲渡制限規定がある会社においては、取締役・監査役の任期を定款に定めることによって最大10年まで延長できることになりました。 - 役員の機関設計の多様化
多少の規制はあるものの、定めかたによっては取締役1名のみの会社も可能になりました。
会社の種類は4つ
株式会社
事業を始めるにあたって一番オーソドックスな組織形態。旧商法では、規制が多く最低でも取締役3名、監査役1名が必要であったが、会社法が施行されてからは1名からでも可能になり、資本金の制限も撤廃されるなど、会社定款もある程度自由に定められることになった。社員(=株主・出資者)の地位・権利は株式という形で均等に分配され、社員は会社に対し出資額を限度とした間接有限責任しか負わない。
LLC(合同会社)
会社法で新しく創設された種類の会社。すべての社員が有限責任であり、定款記載の出資の額までしか責任を負わない。社員全員の一致がなければ定款の変更その他会社のあり方を決定できない。出資者が業務執行権と代表権を有する(任期なし)。決算広告義務なし。安価なコストで迅速に会社を立ち上げることが可能。旧有限会社に一番近い形態。役員などの機関設計も不要で、定款自治により経営実態に合致した会社運営が可能。
合資会社
有限責任社員と無限責任社員とで構成される(最低2人以上必要)会社である。無限責任社員が、会社債権者に対し直接・無限・連帯責任を負うため、出資者である無限責任社員の信用力がそのまま会社の信用力となる。社員間や社員・会社間の関係が密接で社員の個性が重視されるので家族経営向き。
合名会社
無限責任社員のみで構成される会社。社員間や社員・会社間の関係の密接で社員の個性が重視されること社員が経営に参加する責任経営など合資会社と同じであるが、合名会社は、社員全員が会社債権者に対し直接・無限・連帯責任を負うので、責任経営の極地といえる。
LLP(有限責任事業組合)
組合という名のとおり民法上の組合の特例となる組織形態で、会社法に基づく会社組織とは異なる。有限責任事業組合は、2人以上の個人又は法人が有限責任事業組合契約の当事者となり、契約を締結して出資を履行することにより成立する。
特徴
出資者である組合員の責任が出資の価額を限度とする有限責任であること構成員である組合員の権限、損益の分配などの内部自治が組合契約により柔軟に定められること。課税については法人格のない組合組織であるため構成員課税となることがあげられる。
会社設立登記手順
- 会社設立事項案を当事務所作成のチェックリストに基づいて決定(主に商号、目的、本店を決めます)
- 類似商号調査
不正の目的をもって他の会社であると誤認されるおそれのある商号の使用は禁止されるので、会社の成立の際は後日の紛争を避けるため法務局で商号調査を行います。 - 事業目的の検討
会社の事業目的は、「適法性」、「営利性」、「明確性」を有していなければならないので、場合によっては、法務局との打ち合わせが必要になってきます。 - 会社の印鑑の作成
類似商号が終わり次第、会社の実印となる印鑑を作成します。そのほか、銀行の届出印、社判、ゴム印等があると便利です。 - (電子)定款の作成
- 電子定款*2の認証
- 出資金の払い込み
- 役員の選任、具体的な本店の所在場所を決定
- 会社設立登記申請
- 会社設立登記完了(登記申請から約10日後)
*1 持分会社:持分会社とは⇒合名会社=無限責任社員のみで構成される会社、合資会社=無限責任社員と有限責任社員が混在する会社、合同会社=有限責任社員のみで構成される会社の3つの種類の会社の総称
*2 電子定款:電子定款に対応しているので印紙代の4万円は不要です。